top of page

Articles

​曲技飛行に使われる飛行機

​ 曲技飛行に使用される機体は、特殊な動きに耐えうるよう特化した仕組みを備えています。

 グライダー、飛行機、ヘリコプターなど、動力機(エンジンの力で飛ぶ)や滑空機(エンジン無しで飛ぶ)といった違いはあってもそれぞれ高い機動力を備えており、熟練した機体のコントロール技術が必要とされます。 

topimage.jpg

MDM-1 FOX

MDM-1 Fox は、ポーランド製の2人乗り曲技グライダーです。 正式名称は「ザクワト・レモントウフ・イ・ロドウクツイ・スフシェントウ・ロトニチェゴ・エドヴァルド・マルガンスキ式MDM-1“フォックス型”」といいますが、「式」の前は製造会社名で、エドヴァルド・マルガンスキ航空機製造及び修理会社といったところでしょうか。MDMとは機体の設計・製作に携わったマルガンスキー、ドノウスキー、マクラの頭文字から付けられました。

JA3704_2.JPG

 富士重工式FA-200型シリーズ
(エアロスバル) 

FA-200は富士重工(現株式会社スバル)が独自開発した単発小型飛行機です。戦後の日本において初めて、かつ唯一量産された飛行機でもあります。 

1965年の初飛行から1986年までの間に299機(試作機3機を含む)が製造、販売され、その内170機は海外に輸出されました。国内で現存しているのは15機程と推測されます。 

エアロスバルという通称は富士重工の自動車ブランド(スバル)からとられたものです。 特徴としては、低翼の単発機であり固定脚やスライドキャノピーを備えている事が挙げられます。エンジンはライカミング製、乗員4名で長距離のフライトが可能、宙返り等の基本的なアクロバット飛行がこなせる強度(+6G/-3G)といった性能を兼ね備えた機体です。 エアロスバルシリーズとしては、  FA-200-160タイプ(ライカミングO-320 160HP キャブ仕様、マコーレー固定ピッチプロペラ)  FA-200-180タイプ(ライカミングIO-360 180HP インジェクション仕様、マコーレー定速プロペラ)  FA-200-180AOタイプ(O-360 180HP キャブ仕様、マコーレー固定ピッチプロペラ)  等があり、その他修理改造されてエンジンをAEIO-360に換装し背面飛行が可能な機体が2機、2023年現在も飛行しています。  国内では長年にわたり航空大学の訓練機として活躍し、韓国の航空宇宙大学でも訓練機として使用されていた実績があります。

TAKA_1.jpg

Pitts Special S-1/S-2

長い歴史を持つ曲技飛行機で、1940年代にアメリカで設計・製造され、現在も生産され続けています。翼が2枚ある複葉機であり、軽い機体や見た目の可愛らしさとは対照的にエアショーでは迫力ある飛行を見せてくれます。  日本では2023年時点で仙台と名古屋で見ることができるようです。また、アメリカで活動中のRED FOX Airshowsのパフォーマー、高木パイロットもPitts Special S-2Sを使用しています。

Citabria(シタブリア)

 米国ウィスコンシン州に本部を構えたチャンピオンエアクラフト社が、1964年に製造を始めた小型飛行機です。この聞きなれない「Citabria」という名前は、「AIRBATIC」を反対につづった造語で、「シタブリア」と発音します。
 鋼管フレームにファブリックで覆われた、タンデム形式の2人乗りの機体に、固定式・尾輪式のランディングギアを装備しています。+5G/-2Gの強度を持つ曲技飛行機で、基礎曲技飛行訓練や、尾輪式飛行機の飛行訓練などに人気です。

エンジンはコンチネンタル社製のO-200の100HP、またはライカミング社製のO-235の115HPが装備されています。プロペラはマカーレー社製の金属製固定ピッチで、経済性と操作の簡易性を両立させています。  生産は1970年にべランカエアクラフト社に移り、1989年からはアメリカンチャンピオンエアクラフト社により生産が続けられています。鉄製のランディングギアはアルミニウム合金となり、また木製だった主翼のメインスパーはアルミニウム合金製に変更されるなど、いくつかの改良が行われました。  7ECAは1950年代から同社が生産していた7ECが元となっています。派生型には、160HPのエンジンに変更した7GCAC。5段階に設定可能なフラップスを装備した7GCBC。燃料系統や潤滑系統を改良し、背面飛行を可能とした7KCABなど、多くの型が存在します。

Sukhoiシリーズ

 Sukhoi(スホーイ)シリーズは旧ソビエトが曲技飛行世界選手権のタイトルを奪還するために国の威信を賭けて開発した機体で、世界的に著名な曲技飛行パイロットであるユルギス・カイリスが開発に携わりました。開発にあたったSukhoi設計局は、ジェット戦闘機としては現代最高の機動性を持つと言われるフランカーシリーズを開発したことで有名です。
 シリーズで最初に開発されたのがSu-26で、1984年に初飛行しました。Su-26の登場は、曲技飛行界にとって革命的な出来事だったと言われています。

カーボンファイバー製の桁と外板の主翼、ステンレス製のフレームに着脱可能なカーボンファイバー製の外板で覆われた胴体、チタン合金製の主脚などは、当時としては先進的な構造で、これまでの曲技専用機よりも高い機体強度をより軽い重量で実現させました。最初に生産された4機のSu-26は2枚ブレードプロペラを装備していましたが、その後に生産された機体はドイツMT-Propeller社製の3枚ブレードプロペラを装備しました。Su-26をベースに改良された量産型がSu-26Mで、Su-26Mに主翼内燃料タンクなどを追加した輸出仕様がSu-26MXです。2003年には主翼を大型化してエンジン出力を増加させ、射出座席を装備したSu-26M3も登場しています。  Su-29はSu-26MXを複操縦装置付きのタンデム複座とした機体で、1991年に原型機が初飛行しました。Su-26MXよりも一回り大型で重量は若干重いですが、曲技性能を最大限に発揮するために空力的改善が施され、単独で飛行すれば世界選手権で好成績を収められる性能を持っています。また、複操縦装置付きなので曲技飛行の訓練にも使用できます。標準型のSu-29のほか、軽量超低空射出座席の試験機Su-29KS、KSの量産型Su-29M、アルゼンチン向けSu-29ARなどがあります。  Su-29の外形寸法を短縮化、構造強化を図って単座化したのがSu-31で、1992年に初飛行しました。Su-31の主翼をSu-26M3と同じ大型の主翼に換装し、射出座席を装備したSu-31Mも存在します。

Yakシリーズ

SukhoiシリーズのSu-26が登場するまで、旧ソ連で曲技機といえば長らくYak(Yakovlev)がトップの座に就いていました。Yakの曲技機の歴史はYak-18から始まります。Yak-18は1946年以来、旧ソ連の軍用および民間クラブ用として広く使われてきた初級練習機です。当時の旧ソ連のパイロット訓練システムで使用される初級練習機には、曲技飛行が可能なことが求められたため、Yak-18のような初級練習機は曲技飛行が可能な性能を持っています。Yak-18には多様なバリエーションがあり、Yak-18PSのような単座の曲技練習機も存在します。 Yak-50はYak-18PSの性能向上を図った機体で、1975年に初飛行しました。Yak-18PSから大きな変化はありませんが、エンジンをベデネイェフAI-14RF(300馬力)からM-14P(360馬力)に換装するなど性能を向上させています。 Yak-52はYak-50の複座型です。Yak-50は尾輪式でしたが、Yak-52は前輪式に変更されました。 Yak-52の当初の用途は軍用練習機でしたが、高い敏捷性と非常に優れた曲技飛行能力を持っているため、曲技飛行競技やエアショーなどでも使用されています。FAI(国際航空連盟)は2008年からYak-52のみで競い合うワンメイクの曲技飛行世界選手権(通称Yakクラス)を開催しています。 Yak-55はYak-50の後継として開発され、1981年に初飛行しました。エンジンはYak-50同じですが、機体は完全に新設計され、主翼位置を低翼から中翼に変更、 主翼自体の構造も異なります。 Yak-55MはYak-55の曲技飛行性能を高めるために改良が加えられた機体で、1991年に登場しました。主翼やエルロンなどに改良が施され、曲技飛行性能の向上が図られています。 Yak-54はYak-55Mを複座化した機体で1993年に初飛行しました。複座となっても単座のYak-55Mより重量が10kg増加しただけで済み、パイロット1名搭乗の場合はYak-55Mと全く変わらない飛行性能を発揮します

bottom of page